統計力学において、大きな目標の一つが系の自由エネルギーの表式を得ることであると思っています。 しかし、多くの統計力学の教科書では粒子間の相互作用を完全に無視した自由エネルギーの表式の導出で終わってしまい、果たして相互作用がある場合はどのような標識になるのか教えてくれない場合が多いです。このページではダイヤグラム展開を利用した液体論を用いて相互作用がある系に対しても自由エネルギーの表式を得られるようにします。
HNC近似による自由エネルギー導出
HNC理論では、エントロピーの標識で2PI diaramを無視します。
このリング状のdiagramは波数空間$K$を用いると簡単に計算できます。例えば次数3のリング状diagramの積分は下記のようになる。
マクローリン展開式$\ ln(1+x)=x−\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{3}x^3−\frac{1}{4}x^4+⋯$を利用すると、無限和をまとめることができます。
ここで$g=h+1$を導入しています。
$βF=βU−S$を利用するとHNC理論における自由エネルギーの表式を得ることができます。
HNC Closer導入
自由エネルギーの極小を与えるための条件からHNC closureを導出できます。そのために、直接相関関数$c(1,2)=−β\frac{δ^2F}{δρ(1)δρ(2)}$を導入します。
直接相関相関関数$c$と全相関関数$h$にはOZ方程式の関係が成立する。
熱力学的平衡に達した系ではこの微分は$0$になります。この結果、相互作用$v$が与えられた際に$h$と$c$が満たすべき関係式が得られます。 ($g=h+1$)
以上から、以下の連立方程式を解けば相互作用$v(1,2)$が与えられた際に動径分布関数$g$と自由エネルギー$F$を求めることができます。
これまでの段階で相互作用$v$のある系に対して 自由エネルギーを求める方程式が完成しました。